大きな目標には、不思議な力があります。「ハーフマラソンを走る」「英語を話せるようになる」「本を書く」。口にした瞬間、わくわくするのと同時に、とても無理だという気もしてきます。ゴールは見えているのに、最初の一手が見えない。だから、予定の空いた週末や、もっと落ち着いた月や、今より時間に余裕のある自分を待ってしまいます。
必要なのは、もっと自分を追い込むことではありません。よりよい地図です。大きな目標を、今日から始められるくらい小さな一歩に細分化した地図。細かい表を作らなくても、一年分の計画を先に立てなくても大丈夫です。そのやり方を紹介します。
大きな目標が止まってしまう理由
大きな目標は、結果を描いた絵であって、やり方の説明書ではありません。「本を書く」を前にしても、脳はどこから手をつければいいのかを見つけられません。だから目標は、毎日同じことを問いかけてきます。「そもそも、どこから始めればいい?」。たいていの日、正直な答えは「今日じゃない」です。
目標を小さく区切る、いわゆるスモールステップがなぜうまくいくのかについては、しっかりした研究があります。Albert Bandura と Dale Schunk による古典的な研究では、子どもたちに長い算数の課題に取り組んでもらいました。一方のグループには、最後のページを目指すよう伝えました。もう一方のグループには、1回ごとに近い目標を与えました。すると、近い目標を持ったグループのほうが速く進み、内容をより多く身につけ、算数そのものもより楽しむようになりました。近い目標は手応えをくれますが、遠い目標がくれるのはプレッシャーだけです。
効果はもうひとつあります。人は、ゴールが近づくほどペースを上げます。研究者の Ran Kivetz、Oleg Urminsky、Yuhuang Zheng は、コーヒーのスタンプカードでこの現象を観察しました。無料の一杯が近づくにつれて、お客さんがコーヒーを買う頻度が上がったのです。目標をいくつかの節目に区切ると、はるか先にひとつだけあったゴールが、いくつものゴールに変わります。
ステップ1. 「完了」がどんな状態かを言葉にする
細分化する前に、目標を「終えられる」くらい具体的にしておきましょう。「健康になる」には終わりがありません。「5kmを止まらずに走る」には終わりがあります。「英語を学ぶ」には終わりがありませんが、「英語で10分間会話する」にはあります。
Edwin Locke と Gary Latham による目標設定の研究も、同じ方向を指しています。「とにかくベストを尽くす」よりも、具体的な目標のほうがよい結果につながるのです。「たどり着いたって、どうやってわかる?」と自分に聞いてみてください。答えは一文で書いておきましょう。
ステップ2. 3〜5つの節目に分ける
節目(マイルストーン)とは、今日から「完了」までのあいだにある大きなかたまりのことです。ここで完璧を目指す必要はありません。だいたいの順番がわかれば十分です。「5kmを止まらずに走る」なら、たとえばこんな形になります。
- 週3回、20分歩く。
- 20分間、走りと歩きを交互に繰り返す。
- 10分間、止まらずに走る。
- 20分間、止まらずに走る。
- 5kmを走る。
節目がまだわからなくても、初めてのことなら当然です。その場合、最初の節目は「道のりがどんなものかを知る」で構いません。初心者向けのガイドをひとつ読む、レッスンをひとつ見る、経験者にひとり話を聞いてみる。
ステップ3. 最初の節目を、一度で終わる一歩に分ける
多くの計画がつまずくのは、ここです。「第1章に取り組む」は一歩ではありません。一歩の顔をした、小さな目標です。本当の一歩は、次の三つのテストに合格します。
- 一度で終えられる。たいていは5〜30分。
- 先に何かを決めなくても始められる。
- 横で見ている人にも、終わったかどうかがはっきりわかる。
『Getting Things Done』(GTD)の著者 David Allen は、これを「ネクストアクション(次にとるべき行動)」と呼んでいます。今すぐ取りかかれる、目に見える具体的なひとつの動作のことです。「第1章の書き出しの段落を書く」は合格。「あらすじを考える」は不合格です。
ステップ4. どの一歩にも「完了の目安」をつける
あいまいな一歩は、いつのまにか膨らんでいきます。「英語を練習する」は10分のこともあれば、ひと晩まるごとのこともあります。はっきりしないと、飛ばすのも簡単です。だから、どの一歩にも短い「完了の目安」を添えましょう。
- 新しい単語を8つ覚える。見ないで一つずつ言えたら完了。
- 楽なペースで15分走る。タイマーが鳴るまで足を止めなかったら完了。
- 書き出しの段落を下書きする。推敲前でも、段落がひとつ最後まで書けたら完了。
「完了の目安」があれば、後ろめたさなく手を止めることもできます。終わったら、それで終わり。その日の残りは、自分の時間です。
ステップ5. 計画するのは、次の数歩だけ
最初からすべての一歩を書き出したくなりますが、そこはぐっとこらえましょう。半年後の細かい計画は当て推量にすぎず、実際の生活が始まった瞬間に古くなります。机の上でどれだけ計画を練っても、最初の一週間で学べることにはかないません。
節目はおおまかな地図として残し、一歩の計画は数日先までにとどめましょう。一歩終えるたびに、自分にひとつだけ聞いてみてください。「これを前に進める、次の小さなことは何?」。それで十分です。
ステップ6. しんどい日のための、小さいバージョンを用意する
一歩はいずれ、疲れた夜や忙しい週、どうにも気が乗らない日にぶつかります。そんな日は飛ばすのではなく、小さいバージョンに切り替えましょう。一歩が「15分走る」なら、しんどい日のバージョンは「ランニングシューズをはいて、近所をひと回り歩く」。「800字書く」なら、「昨日の段落を読み返して、一文だけ直す」です。
小さいバージョンが、糸をつないでくれます。くわしくはやる気が出ない日にできることで紹介しています。
細分化の具体例:大きな目標から最初の一歩まで
| 大きな目標 | 節目 | 最初の小さな一歩 |
|---|---|---|
| 5kmを走る | 10分間、止まらずに走る | 1分走って2分歩く、を5回繰り返す |
| 英語で10分間会話する | 自己紹介をして、自分の一週間について話す | 毎日の生活についての単語を8つ覚える |
| 本を書く | 第1章のラフな下書きを仕上げる | その章の要約を3行で書く |
| 自分のプロジェクトを始める | 最初のバージョンを3人に見せる | それが解決するたったひとつの問題を、一文で書き出す |
| ギターを弾けるようになる | 1曲をゆっくり最後まで弾く | GとCのコードを覚えて、5分間切り替えの練習をする |
| 今年20冊読む | 最初の1冊を読み終える | 夕食のあとに10ページ読む |
よくある失敗
- 実はプロジェクトになっている一歩。一度で終わらないなら、さらに分けましょう。
- 考えるだけの一歩。「トレーニングの計画を立てる」は、いつまでも続けられてしまいます。「走る曜日を3つ選んで、カレンダーに入れる」なら5分で終わります。
- 最終的な結果だけで測る。5kmを目指す途中なら、距離がまだ変わっていなくても、短いランを続けた一週間は本物の前進です。そのことに、ちゃんと気づいてあげましょう。
- 空白のあとに、最初からやり直す。何日か空いても、最初の節目に戻る必要はありません。今いるところから、小さな一歩で再開しましょう。
よくある質問
一歩は、どのくらい小さくすればいいですか?
正直な反応が「まあ、それなら今日できる」になるくらいです。ある一歩をつい先延ばしにしているなら、たいていは、もっと頑張るのではなく、もっと小さくするサインです。
一度に何歩先まで計画すればいいですか?
ほとんどの目標なら、次の3〜5歩で十分です。それ以上計画すると、前に進むことより、計画の手入れにエネルギーを使うことになります。
まったく初めて挑戦する目標なら?
最初の節目を「学ぶこと」にしましょう。最初の一歩は「初心者向けのガイドをひとつ読む」や「10分のレッスンをひとつ見る」で構いません。一歩は、進むほどはっきりしてきます。
大きな目標をいくつも同時に進めてもいいですか?
まずはひとつから。安定したリズムができたら、ふたつ目を加えるといいでしょう。いくつもの目標が同時にゆっくり進んでいると、たいていは、どれも進んでいないように感じてしまうものです。
目標の細分化は、Aimoraにまかせる
毎晩自分で目標を分けていくのは、ちょっと面倒。そんなときこそ、Aimoraの出番です。目標と、使える時間、いまの状況を伝えると、毎日ひとつ、次の一歩が届きます。一度で終わる大きさで、「完了の目安」がはっきりしていて、「なぜ今」なのかを伝える短い一言もついています。
今日は多すぎる?もっと小さくしてほしいと頼めば、次の一歩がそれに合わせて変わります。数日順調に続いた?一歩も一緒に大きくなっていきます。何日か空いてしまった?Aimoraはいちばん小さな一歩から再開します。計画をゼロから組み直す必要はありません。最初の7日間はすべての機能を使えるので、自分の大きな目標でそのまま試せます。