どこかで読んだことがあるかもしれません。何かを21日間続ければ、それが習慣になる、と。そこで試してみます。朝食のあとにコップ1杯の水、寝る前に10ページ、ちょっとした散歩。12日目ごろには雑用のように感じられはじめ、21日目になっても、毎回自分を説得しています。
そのうち、静かな結論がやってきます。自分は習慣づくりが苦手なんだ、と。この結論は間違っています。間違っていたのは数字のほうで、自分ではありません。ここでは、「21日」がどこから来たのか、研究者が代わりに何を測ったのか、そして、もっと時間がかかるとわかったうえで習慣をつくる方法を紹介します。
「21日」はどこから来たのか
2012年、Benjamin Gardner、Phillippa Lally、Jane Wardle の3人が、習慣がどのように形づくられるかを British Journal of General Practice 誌に書きました。3人は21日という数字を、俗説と呼んでいます。その出どころは、形成外科医 Maxwell Maltz のある逸話にさかのぼります。
よくできた話は、測定の代わりにはなりません。研究者は、習慣が身につくまでの時間を実際に測りました。その答えは、21日よりも長く、もっとまちまちなものでした。
研究でわかったこと
Phillippa Lally らは2010年の研究で、新しい毎日の習慣をつくろうとする人たちを追跡しました。習慣は少しずつ自動的になりました。つまり、必要な労力や、自分を説得する手間が減っていったということです。平均でおよそ66日たつと、横ばいになりました。かかる日数は人によって大きく違いました。そして、1日抜けても、その過程が大きく損なわれることはありませんでした。
Singh らによる2024年のシステマティックレビューは、合計2,601人が参加した20件の研究をまとめました。習慣が身につくまでの日数の中央値は、およそ59〜66日でした。個人の日数は最長で335日、1年近くにまで及びました。
つまり、およそ2か月というのは、よくある日数であって、期限ではありません。人によっては、もっとずっと長くかかります。どちらの研究も、自分自身の日数を教えてはくれません。
日数がこれほどばらつく理由
Wendy Wood、Jeffrey Quinn、Deborah Kashy は2002年の日記を使った研究で、日常の行動のおよそ35〜43%が習慣で、ほぼ毎日同じ場所で行われていたことを見いだしました。ふつうの1日の大きな部分が、すでにルーティンで動いているということです。新しい習慣は、そこに自分の居場所を見つけなければなりません。
上の研究が示しているのは、日数に幅があることです。ひとつひとつの習慣で、なぜそうなるのかまでは教えてくれません。ここから先は私たちの推論であり、研究で確かめられた結果ではありません。
- 行動が大きいほど、毎日求められるものが増え、その日がうまくいかなくなる理由も増えます。コップ1杯の水には、ほとんどありません。30分の運動には、たくさんあります。時間、体力、天気。
- 同じ時間、同じ場所でやってくるきっかけは、習慣に居場所を与えます。これは、日記の研究が習慣として数えたものと一致します。
- 「仕事のあと、どこかで」のように定まらないきっかけには、習慣が腰を落ち着ける場所がありません。
ステップ1. 習慣をひとつ選び、一文で書く
まずはひとつから。何を、いつするかを、一文で書きます。「朝食のあと、コップ1杯の水を飲む」。「もっと体を動かす」や「もっと本を読む」は避けましょう。どちらにも、火曜日の8時15分に何をするのかは書かれていません。
「やめること」ではなく「始めること」として書きましょう。なぜそれが大切なのかは、新年の抱負を1月以降も続ける方法で紹介しています。
ステップ2. すでに毎日起きていることを、きっかけにする
きっかけとは、「今だ」と教えてくれる瞬間のことです。いちばん行動に移しやすいのは、すでに同じ時間、同じ場所で起きていること。たとえば、電気ケトルのスイッチがカチッと切れたときや、車を停めたときです。生活のどんな分野にも使えます。
- スポーツ:帰宅したらすぐ、ランニングシューズをはく。
- 語学:最初のコーヒーといっしょに、新しい単語を5つ。
- 執筆:ノートパソコンを開いたら、下書きを一文書く。
- 家:玄関を入ったら、ものをひとつ元の場所に戻す。
選ぶのは、時間帯ではなく、瞬間です。「夜に」は、きっかけではありません。
ステップ3. 最初は、行動をごく小さくする
最初のバージョンは、ほとんど笑ってしまうくらい小さくします。コップ1杯、外で2分、1ページ、5分の運動。始めたころに積み上げているのは、結果ではなく、くり返しです。ごく小さな行動は、疲れた水曜日も生き延びます。大きな行動は、生き延びられないことが少なくありません。調子のいい日は、いつでも多めにやって構いません。ただ、それを約束にはしないだけです。
ステップ4. 数か月かかる前提で、計画しておく
最初の2か月は、判断するためではなく、積み上げるための期間だと、いま決めておきましょう。カレンダーには、10週間ほど先に「確認の日」をひとつだけ入れ、それより前には入れません。確認の日に自分に尋ねるのは、ひとつだけです。始めるのに必要な労力は、1週目より減っているでしょうか。減っているなら、日数がいくつであれ、順調です。まだなら、一歩を小さくするか、きっかけをはっきりさせて、続けましょう。
ステップ5. 抜けた日があっても、日数を数え直さない
Lally らの研究では、1日抜けても、習慣づくりが大きく損なわれることはありませんでした。ですから、抜けた日は休みの日であって、リセットではありません。数えるのは、連続した日数ではなく、実行した日数です。翌日は、いつものきっかけで、ごく小さなバージョンをやります。取り返す必要はありません。
この研究が見たのは、単発で抜けた日です。旅行や年末年始のような長い中断は別の話で、そのための計画は年末年始も習慣を途切れさせない方法にまとめました。
ステップ6. 楽に感じてから、大きくする
ごく小さなバージョンが、ほとんど労力なしで始められるようになったら、少しだけ足します。1ページを2ページに、外で2分を10分に。大きくしたバージョンがしんどい戦いのように感じられるなら、しばらく小さいほうに戻りましょう。
4つの習慣:やさしいものから難しいものへ
上から順に、求められるものが少ない習慣から多い習慣へ並べています。どれにも、始めるためのごく小さなバージョンと、決まったきっかけがあります。表に日数を載せていないのは、上の研究が、ひとつひとつの習慣について日数を示していないからです。
| 習慣 | 始めるためのごく小さなバージョン | 決まったきっかけ |
|---|---|---|
| 朝食後に水を飲む | コップに注いで飲む | 朝食のお皿をシンクに置いたとき |
| 10分の散歩 | 2分:靴をはいて、玄関を出る | 仕事から帰って、座る前 |
| 10ページ読む | 1ページ | ベッドに入るとき。本は枕の上に置いておく |
| 30分の運動 | 運動着に着替えて、どんな運動でも5分 | 朝の目覚ましが鳴ったとき。運動着は前の晩に出しておく |
よくある失敗
- 21日を期限として扱う。22日目に、習慣は失敗したわけでも、完成したわけでもありません。平均はおよそ2か月で、幅も大きいのです。
- 最初から全力で始める。初日から30分の運動というのは、疲れた水曜日にいちばん崩れやすいバージョンです。
- 気分や時間帯をきっかけにする。「やる気が出たら」や「夜に」では、動き出す瞬間がありません。
- 日数を数え直す。1日抜けたことは、習慣の終わりではありません。
- 自分の日数を、人の日数と比べる。研究では、人によって大きな違いが見られました。
よくある質問
結局、21日なのですか、66日なのですか?
どちらも期限ではありません。21日は俗説です。66日は1つの研究の平均で、20件の研究をまとめたレビューでは中央値がおよそ59〜66日、個人の日数は最長335日でした。
2か月たっても自動的にならないときは?
それでも範囲内です。レビューでは、個人の日数が最長335日に及んでいました。1週目より始めやすくなっているかを確かめましょう。そうでなければ、一歩を小さくするか、きっかけをはっきりさせます。
毎日やらなければいけませんか?
66日という平均のもとになった研究は、新しい毎日の習慣を追跡したもので、1日抜けても、その過程が大きく損なわれることはありませんでした。目指すのは毎日ですが、抜けた日は「抜けた」だけのこと。リセットではありません。
習慣になったと、どうすればわかりますか?
自分を説得しなくてもできて、決めるより先に体が動き出しているときです。Lally らの研究では、習慣は時間とともに自動的になり、やがて横ばいになりました。スイッチではなく、なだらかな坂道だと思っていてください。
ゆっくりした部分は、Aimoraにまかせる
数か月かかる習慣には、3か月目になっても働いてくれる仕組みが必要です。Aimoraは、目標と使える時間、いまの状況をもとに、毎日ひとつの小さな一歩を届けます。それでも重いときは、「重い? もっと軽くする」をタップすると、一歩が軽くなります。安定してきたら、一歩もいっしょに大きくなっていきます。
何日か抜けても、Aimoraは「取り戻して」とは言いません。いちばん小さな一歩から、やり直します。連続記録と進み具合はアプリで確認でき、今日の一歩はApple Watchやウィジェットでも見られます。習慣を急がせることはしませんが、毎日の一歩を、向き合えるくらい小さく保ちます。
